〇下肢血管外来
毎週 月曜日・水曜日・木曜日 午前
〇担当医師
医師名 | 役職 | 認定資格等 |
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小笠原 大介 | 第二循環器科部長 | 医学博士 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医 日本循環器学会 循環器専門医 日本心血管インターベンション治療学会 認定医・専門医 日本脈管学会 脈管専門医 下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医 浅大腿動脈ステントグラフト実施医 Japan Endovascular Treatment Conference |
下肢血管外来の取り組み
当院では全国でもまだまだ不足している足の血管病を専門に診療する下肢血管外来を新たに開設しました。
“下肢血管センター”や“静脈瘤センター”といった名称は時に目にすることようになってきましたが、通常そのような病院は下肢静脈瘤や下肢閉塞性動脈硬化症といった病気をそれぞれ独立して診療することが多いのが現状です。ただし患者さんの中には、ご自身がどの病気に当てはまるのかよく分からなかったり、足の病気を複数もっていたりする方の診療を行う機会を多く経験しました。
あらゆる足の血管病を一つの窓口で診察することができれば、より多くの患者さんに対応することが可能となり、地域医療にも貢献できるのではないかと考えたことが、この専門外来を開設しようと考えたきっかけです。
よろしければ、以下に解説している病気の説明に目を通していただき、気になる方がいらっしゃいましたら、お気軽に当院の下肢血管外来を受診してください
本当はこわい足梗塞(下肢閉塞性動脈硬化症)
下肢血管外来のご案内パンフレットはこちら
このような症状でお困りの方、近しい方にこのような症状をお持ちの方はいらっしゃいますか?
一つでも心当たりのある方は、以下の説明を読んでいただくことをお勧めします。
末梢動脈疾患(下肢閉塞性動脈硬化症)とは?
下肢閉塞性動脈硬化症は“動脈硬化”と呼ばれる血管の変化と深くかかわっています。
動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールが沈着し、血管の内部が狭くなり血液の流れが悪くなった状態をいいます。
動脈硬化はそもそも血管の老化現象のことであり、誰でも年齢を重ねれば血管はもろくなっていきますが、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病がある場合、動脈硬化が通常より早く進行してしまいます。その結果、おもに足の先などに十分な血液が届かなくなることで様々な血液不足の症状が出現するようになります。
〇どんな症状がおこるのか
病気の進行の程度によって1~4度に分かれます(図1)。なお、この分類における3度と4度の状態には“重症下肢虚血”という新たな名前がつけられており、治療が格段に難しくなるだけでなく、一部の方は最悪の場合いのちに関わる危険性もでてきます(図2)。
大切なことは、早期に診断し早期に治療することにつきます。これらの症状がある方は、まずはこの病気を疑い、専門医のいる病院を受診することがなにより重要です。
図1 下肢閉塞性動脈硬化症の重傷度
図2 下肢閉塞性動脈硬化症の方の生存率
〇検査
●検査の手順
下肢閉塞性動脈硬化症が疑われる患者さんが来院された場合、まずは外来で簡単な検査を行い、病気そのものが本当に疑わしいのか、あるいは病気の重症度を調べます。その後、治療を急ぐのかどうか、治療の選択肢は何があるのかなどを詳しく調べていくことになります。
触診・ABI検査・SPP検査など
脈波測定・分節圧測定・SPP検査・エコー検査など
血管造影検査・CT検査などの画像診断
●ABI検査(足関節上腕血圧比)
腕と足首の血圧を同時に測定し、その比を調べます。通常足の血圧は腕の血圧に比べてわずかに高いのですが、足の血圧が下回る場合には下肢閉塞性動脈硬化症を疑います。
●SPP検査(皮膚灌流圧測定)
皮膚の表面レベルの血液のごくわずかな流れを測定する検査で、ABI検査に比べより正確な評価が可能です。血液の流れの悪い重症下肢虚血の方や治療の効果を判定する場合などに行います。
●超音波検査
文字通りエコー検査です。ベッドサイドで痛みもなく行うことができ、下肢閉塞性動脈硬化症の病気の場所や重症の程度をくわしく調べることができます。
〇治療法
●薬物療法
主として血液をサラサラにする薬(抗血小板剤)や血管を拡げる薬(プロスタグランジン製剤)などを使用し、跛行や疼痛といった血液不足の症状の改善を目指します。また高血圧や糖尿病などの生活習慣病をお持ちの患者さんにはそれぞれに対して内服治療も行います。
内服治療は全ての患者さんに対して行う土台のような治療ですが、重症度の高い方は薬物療法だけでは十分な効果を得られないことも多く、これのみで解決することが難しいことが現状の悩ましい問題点です。
●運動療法
通常は歩行訓練を行うことで、閉塞した血管周囲の側副血行路が発達(毛細血管のネットワークを作る)したり、新生血管の増生効果が期待されます。医療機関や医師の指導のもと、在宅で行うこともありますが、医療圏により地域差があるのが実情です。
●血管内治療
動脈硬化で狭くなった血管をバルーン(風船)やステント(金属の筒)によって拡張し、血流を直接的にアップさせる治療法です。当院ではカテーテル治療に力を入れている施設ですので、あとでくわしくご説明いたします。
●外科治療(バイパス手術)
血管が詰まってしまっている場合、詰まっている部分の上下にバイパス血管(ご自身の静脈や人工血管)をつないで、外科的に新しい血液の流れ道を作る治療法となります。
〇血管内治療(カテーテル治療)
当院では下肢閉塞性動脈硬化症に対してカテーテルを用いた専門治療を特色としています。カテーテル治療とは、足の付け根や手首の血管から細い管を挿入して行う治療法のことで、今までも狭心症や心筋梗塞の治療として日常的に行われてきました。ガイドワイヤーと呼ばれる細い針金に沿わせて、先端に風船のついたカテーテルを病気の場所まで持ち込んだ後に、風船を膨らませたり、ステントと呼ばれる網目状の金属の筒を入れることで、長期間にわたり血液の流れをアップさせることが可能です。
治療前
ステント治療後
治療前
バルーン治療
治療後
当院では下肢閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療に力を入れています。一昔前には下肢閉塞性動脈硬化症に対する治療はバイパス手術しかありませんでしたが、近年のカテーテル治療の技術の進歩はめざましく、外科治療にも劣らない治療成績が得られるようになりました。
またカテーテル治療は、皮膚に1-2ヶ所2-3mmの小さな穴を開けるだけで治療できるため、傷もほとんど残りませんし、全身麻酔なども必要ないため、体にかかる負担が非常に少ないことも有利な点です。今後下肢閉塞性動脈硬化症に対する一般的な治療としてますます普及していくと考えられています。
なお当院では、日本でのカテーテル治療の中心を担う日本心血管インターベンション治療学会より専門医として認定されている常勤医師が診療や専門治療を行っていますので、お困りの方は遠慮せずご活用いただければと思います。
下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤治療のパンフレットはこちら
当院では新たに下肢静脈瘤に対する専門外来を開設し、静脈瘤に対して体への負担が少ないレーザー治療を行っています。
ご自分の足を眺めてください。このような症状はありませんか?
こういった症状が多くあてはまる方は、下肢静脈瘤が原因の可能性があります。
下肢静脈瘤とは?
人の足は、立っていても、座っていても基本的に体の下の方に位置しています。そのため足を流れている静脈の血液は重力に逆らって下から上に流れて心臓に戻っていく必要があります。歩くことによってふくらはぎの筋肉が収縮し、この力を借りることで血液は足から心臓方向へ血液を送り出すことが可能となっています。
こうして上に運ばれた血液ですが、そのままだと重力の力で再び下に落ちてしまうため、これを防ぐために血管の壁に逆流防止弁がついています。何らかの原因でこの弁の働きが悪くなり、足に血液が溜まったままの状態が続くと、足の血管が徐々に膨れ上がり、コブとして足の表面に目立つようになります。これが下肢静脈瘤の正体です。
<正常な静脈>
<下肢静脈瘤>
〇下肢静脈瘤の症状
【下肢静脈瘤の主な症状】 |
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足の血管が目立つ |
ふくらはぎがだるい、重痛い、疲れやすい |
足がむくむ |
ふくらんでいる血管が熱くなる、ピリピリする |
寝ているとき、明け方に足がつる |
ふくらはぎに湿疹ができる、くるぶしの上が茶色になる |
くるぶしの上に潰瘍ができる |
➤このような人にできやすい
【性別】 女性に多い(男性:女性 1:3)
【年齢】 加齢とともに増加する
【〇〇】 妊娠・出産がきっかけでできる人が多い
【職業】 立ち仕事の方に多く、進行しやすい
【遺伝】 家族に静脈瘤のある方に起こりやすい
日本人の約9%の方が下肢静脈瘤をもっており、出産経験のある成人女性の2人に1人が一生のうちに下肢静脈瘤を発症するとされています。
○4つのタイプの下肢静脈瘤
静脈瘤の太さ(ボコボコの程度)によって4つのタイプに分けられます。
一般的に症状があり、後に述べるレーザー治療が必要となるのは伏在型の静脈瘤となります。
〇治療法
下肢静脈瘤にはいくつかの治療法があり、静脈瘤のタイプや患者さんの状態によって適切な治療法を選択していきます。
当院ではストッキングによる保存的療法や硬化療法、レーザー治療に瘤切除術を組み合わせた体への負担が少ない低侵襲治療に特に力を入れています
●保存的治療
医療用ストッキングで足全体を適度な強さで圧迫し、静脈の血液が停滞することを防ぎます。ストッキングの圧迫によって、足の静脈に溜まった余分な血液は心臓へ戻りやすくなり、足全体の血液循環が改善されます。ただしストッキングによる圧迫は、症状の進行を抑えたり、再発防止には有効ですが、静脈瘤そのものを治すことはできません。
弾性ストッキングの種類
ストッキングタイプ
(膝上タイプ)
パンストタイプ
ハイソックスタイプ
(膝下タイプ)
●硬化療法
硬化剤とよばれる薬を静脈瘤に直接注射し固めてしまう治療です。固めた血管が硬くなることから硬化療法といわれています。簡単な処置で終わるため入院する必要もありません。硬化療法は軽症の下肢静脈瘤には有効な治療法ですが、硬化療法のみでは再発する頻度も高く、進行して太くなった静脈瘤には治療効果が期待できない場合があります。
●血管内焼灼術
下肢静脈瘤血管内焼灼術とは、逆流を起こしている静脈の中に細いレーザー出力装置を内蔵したカテーテルを挿入し、先端から生じたレーザーの熱で血管内の壁を加熱することで閉塞させる治療法です。閉塞して血液が流れなくなった血管は、数ヶ月の間に線維化し、吸収され消失します。従来行われていたストリッピング手術と劣らない高い治療効果が得られるだけでなく、出血や痛みなどのリスクも少なく、体への負担の少ない治療法として近年普及するようなりました。
●静脈瘤切除術(スタブ・アバルジョン法)
レーザーによる血管内治療は、小さな穴を開けるだけで皮膚を切らずに治療ができますが、より効果的な静脈瘤の治療を行うには、それぞれの患者さんの症状や進行状況に応じて、様々な治療法を組み合わせて行うことがとても大切だと考えています。
レーザー 治療を行っても一部残ってしまう静脈瘤に対しては、皮膚を小さく切開して静脈瘤を取り除く治療を追加して行っています。スタブ・アバルジョン法といい、特殊な器具を用いて極めて小さな切開を行い(1-3mm程度)、静脈瘤を切除する方法です。この方法は傷も小さく縫う必要もないため、傷痕が残りにくく痛みも少ないとされています。
○よくあるご質問
Q.静脈瘤を放置するとどうなる?
A.下肢静脈瘤は命に関わる深刻な病気ではありません。足に静脈瘤があったとしても、痛みやかゆみ、重だるさなどで困っていない方は、そのまま放置したとしてもすぐにトラブルにつながることは少ないといえます。
しかし残念ながら静脈瘤は自然に治る病気ではありません。ゆっくり時間をかけて徐々に進行し、多くの方はいずれなんらかの症状が出現するようになります。
静脈瘤の治療を行うことで足が軽くなったり、歩行が楽になったりすることを実感する方も数多くいらっしゃいますので、実際になんらかの症状を感じた場合には、一度専門の先生にご相談されることをお勧めします。
Q.レーザー治療で血管を閉塞して大丈夫?
A足の静脈の90%は、深部静脈とよばれる足の奥深い場所を流れる血管を通って心臓に戻ります。一方でレーザー治療は表在静脈と呼ばれる皮膚の浅い部分を流れている血管に対して行います。静脈瘤の方は、この表在静脈が正常に働いておらず、むしろ静脈瘤を悪化させる原因になっているためレーザーの熱で閉塞させる必要があります。これにより足全体の血液の循環が良くなりますので心配する必要はありません。
Q.レーザー治療の時間はどのくらい?
A.片足30-60分程度です。麻酔の方法にもよりますが、治療直後から歩いていただくことも可能です。
Q.レーザー治療は安全?
A.下肢静脈瘤に対する血管内レーザー治療の実施基準を満たした医師が治療を行いますので安心して治療を受けていただくことができます。
Q.料金は? 医療保険が使用できる?
診療内容 | 1割負担 | 3割負担 |
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初診時(診察料+エコー検査) | 2,300円程度 | 3,600円程度 |
硬化療法 | 1,900円程度 | 5,700円程度 |
レーザー治療 | 18,000円程度 | 53,000円程度 |
※当院で行っている治療は基本的にすべて保健診療となります。
※弾性ストッキングを購入される際は別途費用がかかります。
※民間の医療保険あるいは生命保険にご加入されている方は、高周波治療に対して手術給付金が支給される場合があります。詳しくは各保険会社にお尋ねください。
※高額療養費制度を利用できます。高額療養費制度とは、1ヶ月の間に医療機関や薬局で支払った額が一定額を超えた場合、超過分の金額を後から払い戻してもらえる制度です。詳しくは当院事務までお問い合わせください。